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共産主義の歴史経験と政治責任 - ソ連・中国・カンボジア・北朝鮮
e0079739_14193945.jpgこの国の政治の不幸は、本来、社会民主主義の政権を担うべき勢力が、徒にマルクス・レーニン主義の看板に固執して自ら政権から身を隔絶させている錯誤にあり、そしてまた、本来、自民党の一派閥でしかない勢力が、半ば社会民主主義の看板を偽装して巧妙に国民を騙し、擬似的な二大政党制を演出している欺瞞にある。この錯誤と欺瞞を一気に突破して、この国に新しい政治の地平を切り拓かなければならない。共産党の言う「科学的社会主義」とはマルクス・レーニン主義の日本版である。マルクス・レーニン主義の日本版でしかない。共産党がいくら反論と抗弁を試みても、この事実は政治学の認識として覆せないだろう。周知のとおり東アジアにはマルクス・レーニン主義の変形版が三種類ある。マルクス・レーニン主義の中国版が毛沢東思想で、これは毛沢東が定式化した。マルクス・レーニン主義の朝鮮版が主体思想で、これは金日成が定式化した。そしてマルクス・レーニン主義の日本版が科学的社会主義で、この理論は宮本顕治が定式化した。時期は三国共通する。



e0079739_14195146.jpgいずれも基礎はマルクス・レーニン主義、つまりスターリンの思想にある。三国の共産党の理論を眺めたとき、最もマイルドな性格なのが日本の科学的社会主義で、他の二国の共産主義革命理論はきわめて苛烈で凄絶であった。大陸的と言うべきか。三国の共産主義の中で唯一政権を獲得できなかったのが日本の科学的社会主義で、偶然の折り重なりの所産とはいえ、私はこの歴史的事実を幸福であったと感じている。日本人は共産主義の悲劇と苦痛を体験せずに済んだ。毛沢東思想と主体思想の統治を受けた人民を憐れむべきであろう。共産主義は単に未来のユートピアを語る言葉ではない。共産党を支持する者は、共産主義についての論議を未来社会の御伽噺へとすぐに持って行こうとするのだが、共産主義とは紛れもなく二十世紀の歴史の話である。人類が経験した悲惨な政治体制である。共産党がいくら「あれは間違った偽りの共産主義」と言っても、それでは二十世紀にあまた出現したあらゆる共産主義国家は、全て偽りで誤りだったという話になる。朝鮮朱子学だ。

e0079739_14201848.jpg今から二十年以上前、私はスターリン主義の研究を思い立ったことがあり、その目的と動機はスターリンの恐怖政治によって何人の人間が犠牲になったのかを数えるボディカウントだった。あの頃は手元にそれほどの資料がなく、ネットもなく、内村剛介とか菊池昌典とかメドヴェージェフなどをめくってコツコツと調べていた。ウクライナの農村飢餓の犠牲者数があり、強制収容所に刑送されて死んだ犠牲者数があり、加算すると天文学的な数字になり、一千万から二千万かなと思っていた頃、グラスノスチとソ連崩壊が起き、NHKやBBCの特集番組制作があり、そうしたボディカウントの問題意識を一気に押し流してしまうような情報の洪水があって、私の個人研究は無意味なものになった。クルトワ・ヴェルトの『共産主義黒書』もそうした中の一冊である。スターリンの共産主義政治は、まず反対派を皆殺しにし、次に党内の同志をロボット以外は全員皆殺しにし、さらにその暴力を国内に向けて、若干生き残らせる服従奴隷以外は皆殺しにするというもので、人類が経験した中で最悪の恐怖政治だった。

e0079739_14203073.jpg殺し方も残酷で、特に同志に対する殺し方が残虐で、狙った標的を逮捕すると獄中で凄惨な拷問を加え、鉄拳で鼻骨をへし折り、眠らせずに何日も尋問を加えて精神的に破滅屈服させ、「自分は反革命スパイだった」と自白させて供述書に署名させ、さらにデッチ上げた「スパイの仲間」のリストに無理やり署名させた挙句に裁判で死刑判決して銃殺するというもので、人間の死に方としてこれ以上残酷で屈辱的なものはないと思われる忌まわしいものだった。簡単に殺してもらったのではないのである。スターリンは拷問の方法を具体的に指示していた。この非道きわまる大量殺戮は、スターリンの個人的資質に由来する問題だという説があったのだが、あの70年代後半に起きたカンボジアの大量虐殺も、ロシアときわめてよく似た構造と実態があり、ナチス的な科学的で事務的な大量虐殺ではなく、もっと陰湿で凄惨な、嗜虐の契機が全面化された目を背けたくなる地獄絵に満ち溢れていた。拷問、密告、子供による親の告発。これらの大量の暗黒が共産主義という現実の中に包摂されている。

e0079739_1229561.jpg文化大革命については少し措くとして、われわれはそれらに続く悲劇を北朝鮮の現実の中でまた再現されて見させられている。同じように、貧困で不潔で、嗜虐的で非人間的で、絶望的で救いがない。想像するだけで気が滅入る。私は一生のうちに共産主義の悲劇と絶望の話と何度向き合って嫌な思いをすればよいのか。そしてその度に、共産党は「あれは違う、あれは誤り、うちは違う、うちは正しい」と一生懸命に(朝鮮朱子学的な)苦しい弁解を言い続け、しかし論壇とマスコミから袋叩きの反共攻撃を受けて、それを防ぎきれず、着実に票を減らしている。空しい図である。「あれは違う、あれは俺じゃない」と言うのは本当はおかしいだろう。同じ共産主義の仲間じゃないか。朝鮮労働党も中国共産党も国際共産主義運動の仲間ではないか。党を割ってスターリンに忠誠を誓った国際派は誰なのだ。私がイタリア共産党の決断を評価するのは、彼らが人間として潔いからである。共産主義の人類史的な悪魔的犯罪を自らの問題として引き受けて、それを決して他人事にして責任回避しようとしなかったからである。

潔く敗北と過誤を認めたのだ。自分の問題として。
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by thessalonike2 | 2005-11-05 23:30 | 創価学会・共産党 (11)
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