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by thessalonike2


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私の北方領土返還戦略 - 国際包囲のムチと経済振興のアメ
私の北方領土返還戦略 - 国際包囲のムチと経済振興のアメ_e0079739_12105251.jpg今朝の朝日新聞の一面記事は北方領土問題だが、その中にこのような記載があった。「日本外務省によると、大統領は会談で領土問題は第2次世界大戦の結果を受けたものだと主張。『一つ直せば他にも波及して、見直しの連鎖になる』と述べたという」。このプーチンの発言は悪くない。指導者としての誠実さを感じる。これは事実だ。問題は小泉首相がこのプーチンの発言の意味をどれだけ正確に理解していたかだが、恐らく頭の中はカラッポで、単に一般論として受け止めただけだっただろう。私が首相なら直ちにその場で応じ返して「大統領、それは具体的にどことどこですか」と訊き返す。そして、プーチンが列挙した各国境線問題について、それぞれ解決策をその場で即答で提案する。それは具体的にはヨーロッパの国境線問題なのだ。北方領土問題はロシア(ソ連)の未解決の戦後問題の一部である。旧ソ連との未解決の戦後問題(領土問題)を引き摺っているのは日本一国だけではない。



私の北方領土返還戦略 - 国際包囲のムチと経済振興のアメ_e0079739_1211529.jpg具体的にフィンランドが東カレリアの問題でロシアとどう折り合いをつけているのか、現在のロシア連邦とフィンランドがどういう関係にあるのか、ソ・フィン戦争の講和状況について私はよく知らない。東プロイセンについては、ブラントの東方外交のときに一応の決着がついているのだろう。が、ソ連が崩壊した現在、二つがロシア領であり続けるのは無理があると私は思っている。日本は毎回のサミットの場で北方領土問題を言い続けるべきなのだ。先進国の首脳が会する一年に一度の場で、世界のプレスの前で、未解決の領土問題について声を上げ続けるべきなのである。毎度恒例でもいいから、会議での首脳発言と会議後のステートメントの際に北方領土問題を提起すればよいのである。そうすれば、ロシアの態度をあのように簡単に「四島はロシアの主権下」などに変えさせることは阻止できたはずだ。確かに鈴木宗男を含めた二島先行論(並行論)が日本の対露外交を混乱させたことはある。

私の北方領土返還戦略 - 国際包囲のムチと経済振興のアメ_e0079739_12112963.jpgだが、それ以上に、外務省はサミットの機会を何故もっと活用しないのか。内実を欠く虚飾の外交劇場になっているサミットを、日本は北方領土問題だけの目的にシフトして宣伝利用してよいはずなのだ。ロシアの態度は情勢の中で変わる。資源大国となり、経済成長を続けているロシアは、今後さらに強気に出て来るに違いなく、領土問題においてロシアの主張を譲歩させられる材料を日本は持っていない。大きな国際会議の場で問題提起して、ヨーロッパ諸国と連携するという包囲戦略以外にないのではないか。少なくとも、ロシアを93年の東京宣言の合意水準に引き戻すためには、世界各国の支持と関心を取り付ける他ないだろう。そういう観点から見たとき、日本の現在の対中対韓関係は実に最悪で、本当なら北方領土問題で日本を支持してくれるべき中国と韓国を敵に回してしまっている。韓国や中国は北方領土問題で日本を支持できないだろう。むしろ現状ではロシア寄りの立場に立たざるを得ない。

私の北方領土返還戦略 - 国際包囲のムチと経済振興のアメ_e0079739_12113874.jpg私が首相なら政経不可分の原則は撤回もしくは修正する。北方領土返還は二国間の直接交渉で実現するのではなく、国際外交で世論形成して包括的に解決する戦略方針に転換する。そして極東ではビジネスに徹して天然資源を押さえ、劇的な貿易の拡大振興を図る。エマージングマーケットであるロシアでの日本製品の市場占有率を上げる。フルブライト的な受入制度を設けて、シベリアと極東から優秀な学生を留学させる。ウラジオストックに病院と大学を建設する。ロシア人はなぜか他と較べて日本語の習得が早い。米国や西欧の人々よりも日本語を流暢に話す人間が多い。狸穴に来た大使のようなエリートもそうだし、稚内や網走に蟹を卸しに来る末端の漁師たちでさえそうだ。あれはどうしてだろうか。昔、網走の寿司屋でその話をしたら、周りにいた地元の客が「そう言えば確かにそうだ」と頷いていた。「ロシア人って皆、日本語の発音が上手だよね」。米国人の話す日本語とは明らかに違う。

私の北方領土返還戦略 - 国際包囲のムチと経済振興のアメ_e0079739_12114626.jpg国際政治では厳しくロシアを追い詰め、二国間経済ではベストパートナーシップを組む。安価なエネルギー資源を獲得し、極東沿海州を市場開発する。私ならそういう戦略を採る。そうしてロシアを、極東地域も含めて徐々に市民社会化し、ソ連の戦後負債清算の世論をロシア国内に興す。EU・ロシア・日本の円卓会議を作り、国連のサポートを得て、戦後国境問題の最終処理を討議する。ウクライナ問題やヤルタ問題もそのパッケージに入れる。EUとロシアの線引きで日本が中立公平の審判役になる。それがロシア国民にとっても最終的に幸福に繋がるのだ。スターリン主義の負の遺産を清算しなければいけないのは日本共産党だけではない。ロシア国民も同じである。カントのケーニヒスベルクがロシア領ではおかしい。ウラジオストックからハバロフスクまで新幹線を敷設する。政経不可分戦略を維持したままではロシアとは何の関係構築もできない。中露をエネルギーと市場と安全保障でくっつけてしまうだけだ。国益にならない。

しかしそれにしても、プーチンは指導者として確かに優秀な男だ。いい感じ。よく仕事している。
私の北方領土返還戦略 - 国際包囲のムチと経済振興のアメ_e0079739_12115721.jpg

by thessalonike2 | 2005-11-22 23:30 | 北方領土・日露外交 (3)
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