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本と映画と政治の批評
by thessalonike2


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借金は返せる、その根拠(1) - 108兆円の不良債権を償却した
借金は返せる、その根拠(1) - 108兆円の不良債権を償却した_e0079739_1531867.jpg私は国の借金は返せると思っている。私には経済学の専門知識はなく、確かにプリミティブなことしか書けず、表現も素人のものでしかないが、私は決して自分の議論が説得力がないとは思わない。私が尊敬する経済学者は、最近では宮崎義一で、中公新書の『複合不況』は感銘深く読んだ。日本経済学の水準を示す一冊だと思う。経済はあのようにスマートに、そしてラディカルに分析して見せてもらいたい。日本人は明治以来、特に戦後は経済学をよく勉強した。上野の森に蟠踞した彰義隊を村田蔵六のアームストロング砲が加賀藩邸から撃滅しつつあるとき、その砲撃の音を聞きながら芝新銭座の慶応義塾で福沢諭吉が塾生に講義したのはアダムスミスの「国富論」であった。日本人の経済学学習熱は戦前のマルクス経済学でさらに高まり、戦後は偉大な巨人を何人も輩出した。宇野弘蔵、宇沢弘文、宮崎義一、他にも。経済学大国の観すらあった。最近の日本に大型の経済学者が出ないのは何故だろう。



借金は返せる、その根拠(1) - 108兆円の不良債権を償却した_e0079739_1533499.jpgマクロの分析と問題提起で日本人を説得し、日本の経済論議と経済政策に大きな影響を与えたのは、この十年間で言えば、わずかにクルーグマン(流動性の罠)だけではなかったか。説得力は外から来ている。金子勝も森永卓郎も内橋克人も宮崎義一のレベルに達しているとは言えない。野口悠紀雄も佐和隆光も斎藤精一郎も駄目だ。経済学という学問自体が地盤沈下した印象があり、経済学部という学府に往年の魅力が感じられなくなった。私から見て、クルーグマンと日本経済学の関係は、ウォルフレンと日本政治学の関係によく似ている。クルーグマンを評価する能力は私にはないが、ウォルフレンは間違いなく丸山真男以降の日本政治学において最大の功績と貢献を残した知性である。この点の評価は誰にも譲らない。ウォルフレンこそ東大法学部の学部長に就くべき正統的資格を持った男であり、日本政治学会の会長に推されるべき存在なのだ。日本人は真面目に社会科学を勉強しなくなった。

借金は返せる、その根拠(1) - 108兆円の不良債権を償却した_e0079739_1534549.jpgそのため日本の研究者が日本の経済や政治を分析する能力を失っている。外国の日本研究をありがたがって翻訳紹介するだけで仕事をしたことにしている。政治思想史学についてもその傾向と状況が顕著で、グラックやバーシェイやハルートゥニアンに生産力を委ねて頼っている。単に日本研究のグローバル化などというエクスキューズでは済まされない深刻な「学力低下」の実相がある。さて、前置きが長くなったが、私が日本の借金を返せると思った根拠は幾つかあって、その一つは前に述べた新自由主義政権による猛烈な「借金膨らまし政策」の問題で、小泉政権は意図的に財政支出を拡大して借金を膨張させている。整備新幹線や新空港建設や新型兵器購入がそれであり、社会保障費は削減しながら、別の部分で大型予算をつけて全体の支出を減らしていない。空前の利益を上げている企業への法人税課税を増やさないのも矛盾している。新自由主義者は財政再建をしようとは本気で考えてはいないのだ。

借金は返せる、その根拠(1) - 108兆円の不良債権を償却した_e0079739_1535618.jpg二極化と人頭税導入こそが目的なのである。日本の貧富の格差を徹底的に拡大させることが目標で、財政再建は政策の目的ではないのだ。だから新自由主義の政権を倒してライブドアやハゲタカのようなバブル企業から課税徴収し、特殊法人を清算して無駄な支出を削減し、カネ食い虫の軍事費とODAを激減させれば、少なくとも借金の膨張には歯止めをかけられる。これが一点。もう三点ほど根拠がある。その一つは、国民はこの13年間、必死になって借金を返してきたという事実だ。国民は銀行の不良債権の借金を自分の犠牲で返してきた。金融庁が発表している不良債権額の推移表があるが、この表を見ると、平成14年3月期に52兆円あった日本の金融機関の不良債権総額が17年3月期には25兆円へと半減している。小泉首相と竹中平蔵はこれを「構造改革」の成果だと嘯くのだが、国民は自らの犠牲で3年間で借金27兆円を返した。リストラと貸し剥がしと金利ゼロの犠牲で不良債権を償却したのだ。

借金は返せる、その根拠(1) - 108兆円の不良債権を償却した_e0079739_1543369.jpg検索で見つけたネットの中の別の表(数字は金融庁)では、平成4年度から13年度までの10年間で不良債権の処分累計額が81兆円に上るとされている。実際のところ、どういう数字を見て、どう信じてよいかはよく分からない。銀行の不良債権額そのものを金融庁が積上計算で正確に公表していないから、実態は13年前から藪の中のままと言える。だが銀行の不良債権が減ったことだけは確かな事実であり、それが国民の血の犠牲によるものであることだけは間違いない。日本人は国の借金を返す前に、先に銀行の借金を減らしたのである。バブル(土地株投機)の尻拭いをさせられたのだ。上の二つの資料を根拠にして、ここで私が素人の所見で数字を作って言えば、日本人は13年間で108兆円の借金を返している。不良債権を償却している。凄い事実じゃないか。日本人はやはり優秀な民族なのだ。われわれは上杉鷹山と二宮尊徳の子孫である。調所広郷と村田清風のDNAを受け継いで生まれている。日本人は借金を返せる。

銀行の尻拭いが終わったから、次は政府の尻拭いをしてやるのだ。きっとできるよ、われわれは日本人なのだから。
借金は返せる、その根拠(1) - 108兆円の不良債権を償却した_e0079739_1544748.jpg

by thessalonike2 | 2005-10-17 23:30 | 改革ファシズム (14)
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