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バレンタインは詩人である - 胸いっぱいの感動をありがとう
e0079739_12344270.jpg勝利監督インタビューのお立ち台に上がったとき、ボビーが最初に口にしたのは、十年前に自分を日本へ呼んでくれた広岡達朗への感謝の言葉だった。それを聞き、それを言ったボビー以上に私は胸が熱くなった。われわれは十年前のあの確執劇を覚えている。広岡達朗はどこまでも卑劣で醜悪だった。この世で男の嫉妬ほど醜いものはない。ボビーの手腕と人気に嫉妬した広岡達朗は、万年最下位争いに低迷する弱小球団を僅か一年で第二位に押し上げたボビーの才能を妬み、世間の評価がボビーに集中するのが羨ましくて我慢できず、無用な諍いを起こし、ボビーを擁護するファンに対して面当てするかの如くGMの権力を濫用してボビーを馘首した。ロッテファンの失望と無念は大きく、騒動の後の試合を覚えているのだけれど、ファンはマリン球場の内野席上段に「COME BACK BOBBY」の大きな横断幕を掲げ、失意のボビーを励まし、その日からボビー復活への運動が始まり、十年の歳月をかけたドラマが始まった。



e0079739_12345636.jpgボビーが日本に登場したのは95年の春。ボビーはロッテ監督に着任すると同時に、あのデザインを一新した黒と白のユニフォームを着て、コンパック上陸のセンセーショナルなCMに出演した。私とボビーの最初の出会いはコンパックのCM映像で、それはコンパックが世界標準仕様のDOS/V機でNECに挑戦状を叩きつけた瞬間であり、あのセンス抜群のCMを企画製作したクリエイティブの才能を、私は今でも心から尊敬している。いつか必ずボビーは千葉に帰還する。待ち続けて十年。人の一生の中で十年は大きい。関本忠弘のZ旗の逸話も今は空しく、市場からは世界標準以外の製品仕様は絶滅した。ロッテファンの躍動するエネルギーは、諦めずに粘り続けた十年の希望の上にあり、昨日今日始まった粗製の商業文化の演出ではないのだ。私がロッテを応援するのは、そのドラマへの共感ともう一つ小さな事情があり、ロッテが地域で宣伝活動を始めた当時、私の人生とクロスする幸福な出来事があったことがある。

e0079739_1235763.jpgそれは自分一人で思い出すことであり、眠れない真夜中に心の中の宝石箱から取り出す小さなルビーだが、それが自分の人生に微かな豊かさを与えてくれたことに、ひそかに感謝して眠るのである。今年の日本シリーズは第一戦の攻防に全てが集約されていたようであり、特に五回の西岡剛の投手と一塁手の間を抜いた絶妙のプッシュバントが印象深い。プロ野球の歴史に残るだろう。今江敏晃のセーフティバントも見事で、井川慶もよく守備したのだが、実戦から離れていた影響が間一髪の差で出てしまったのだろうか。あの後、井川慶は崩れた。そして勝負の流れが決まった。私が不審に思うのは、あのとき捕手の矢野輝弘がマウンドに歩み寄って井川慶に声をかけなかったことだ。三塁手で主将格の今岡誠もそれをしなかった。昨秋以来の井川慶の騒動が影響を与えているのではないかと勘ぐらさせられた。二番手の橋本健太郎が打ち込まれても矢野輝弘はマウンドに上がろうとしなかった。普通なら矢野輝弘は必ずそれをする。

e0079739_12351650.jpg私の中で「阪神敗れたり」を感じた瞬間だった。現在の阪神タイガースは一人一人の選手が大型で技量に優れ、主将格のスター選手が何人も揃っていて(今岡・金本・赤星・矢野)、その景観は九連覇時代の黄金期巨人のナインを彷彿とさせるものがある。個々のプレイヤーが大型であるだけに、短期決戦で一丸となるときのコミュニケーションのバランスが微妙になったのだろうか。率先して軍団のコミュニケーションを統率するリーダーが必要だった。リーダーとして全体を牽引すべき主砲二人が打撃不振でそれができなかったという問題もある。結局、一団に纏まったロッテに阪神の戦力が各個撃破されて殲滅された印象だが、四戦を通じてロッテの先発投手が実によく頑張ったのである。四人の中で最も調子がよかったのは最後に出たセラフィニで、コントロールが抜群だった。審判はロッテの四連勝を避けるべく、セラフィニのコースを厳しく判定して阪神打線に隙を与えようとしていたが、セラフィニの気迫がそれを阻止していた。

e0079739_12352984.jpg私の眼からは、清水直行も渡辺俊介もさほど調子がよいようには見えなかったが、なぜか回を追う毎に阪神打線の方が精気を失って打ち損じて行った。シリーズはどうしてもこんな具合になる。プレッシャーがかかって実力者でも平常を失う。二戦目の渡辺俊介の投球を見られたのは幸運だった。プレーオフの渡辺俊介の試合は中継がなくて見られなかったのだ。アンダースローには独特の男の美学がある。長身でスリムな渡辺俊介のアンダースローは芸術的で限りなく美しい。飄々として華麗なフォームに見とれて溜息が出る。流麗で威力のあった山田久志のアンダースローも、孤独な悲壮感に包まれた小林繁のサイドスローも、ドラマティックで感動させられるものだった。プロ野球は感動とドラマをわれわれに届けて歴史を紡ぐ。今年の主役はバレンタインだった。バレンタインの中には夢と愛と情熱が溢れている。どこまでも選手に優しく、応援する観客に内在して、チームの結果をベストに導き出して行く。生まれながらの指導者。天才指導者。

バレンタインは詩人である。心からおめでとう。
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by thessalonike2 | 2005-10-27 23:50 | プロ野球・WBC関連 (7)
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