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本と映画と政治の批評
by thessalonike2


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紀宮の結婚披露宴 - 象徴天皇制の伝統を作る両陛下の挑戦
紀宮の結婚披露宴 - 象徴天皇制の伝統を作る両陛下の挑戦_e0079739_11172381.jpgすべてが澱んで醜く腐りきったこの国で、皇室だけが美しく誇らしく光り輝いている。政治も経済も社会も膿み病んで朽ち果てて、恥のみを惨めに世界に曝しているこの日本で、皇室だけが本来の日本の気高さを証明して見せている。天皇陛下は象徴天皇制の理念を具現化する挑戦を最後の最後までやめようとせず、その姿に私は感動させられる。昨日の結婚披露宴の映像も衝撃的で驚かされる内容だった。披露宴がごく普通の日本人のそれと全く同じ規模と形式の簡素なものだったことに驚かされ、その広くない披露宴会場のテーブルに、普通の人間と同じように両陛下が入場して着席したことも意外だった。その両陛下の表情が歓びに溢れたもので、特にカメラ正面の皇后陛下が手前の紀宮に慈愛と祝福の笑顔を送られたときの表情は、地上にこれほど美しいものがあるだろうかと思われるほどの眩しい輝きに溢れていた。日本の女は美しい。老境に美しく咲き輝く日本の女の幸福を美智子皇后がまさに象徴的に体現されている。



紀宮の結婚披露宴 - 象徴天皇制の伝統を作る両陛下の挑戦_e0079739_11173570.jpg天皇陛下もこの上なく嬉しそうな表情だった。このひとが嬉しそうな顔をすると、見ている私も嬉しい気分になる。二人で互いに二人の顔を探し合い、微笑み合ってグラスを合わせ、乾杯してシャンペンを口に入れる絵もよかった。二人はいつも互いを尊敬し、いたわり支え合っている。互いに「ご苦労さまでした、よかったですね」と言い合っているようで微笑ましかった。皇室が自分の家族のように思える。国民が皇室を自分の家族のように思えるように、両陛下は懸命に演出され、努力され、現在の信頼と尊敬の皇室文化を構築された。天皇制のある日本でよかったと誰もが思ってくれるように、両陛下は心を砕いて毎回の感動の演出をわれわれに見せている。ご立派だ。最近の両陛下、特に天皇陛下の様子は自信に満ち溢れていて、自己の人生の完成に満足されているように窺える。昔は、もう少し自信なさげな青年だった。こういう心から尊敬できる両陛下の在位の中で生きられたことを私は幸せに思うべきなのだろう。

紀宮の結婚披露宴 - 象徴天皇制の伝統を作る両陛下の挑戦_e0079739_11174576.jpg結婚式会場の部屋に入るとき、両陛下の前にも後にも付添と護衛の姿がなく、テレビカメラの前に剥き出しになった二人が廊下から会場に入る絵が映され、それにも驚かされた。天皇家が結婚披露宴に出るという絵は、これから二度と見ることができない。皇太子の一子は女帝になって終わりであり、女帝の婚礼の儀は宮中で行われ、女帝の子が結婚式を挙げる頃は私はもう生きていない。一生に一度の貴重な映像だった。秋篠宮の娘たちが嫁ぐとき、これと同じような感じになるのだろうか。長い天皇制の歴史の中で日本国憲法の象徴天皇制は六十年前からの初めての試みであり、万事が明仁天皇と美智子皇后の一挙手一投足で新しい伝統が作られている。今年のサイパン慰霊の旅と韓国人慰霊碑での黙祷も果敢な挑戦だった。昨年末の誕生日のときの談話だったか、皇太子との親子喧嘩に触れた一件も、微笑ましく、大いなる挑戦だった。象徴天皇制の天皇は血の通った人間でなくてはいけない。天皇を神から人にする挑戦。

紀宮の結婚披露宴 - 象徴天皇制の伝統を作る両陛下の挑戦_e0079739_11175519.jpgこの国の象徴天皇制を思うとき、私はそれが自分の祖国だとしみじみ感じ、それを愛しく思う。日本国憲法の日本国が自分を育てた環境であり故郷なのだ。平和主義と高度成長、そして象徴天皇制の日本こそが祖国なのであり、そこで真面目に慎み深く働いていた日本人が私の故郷の原風景なのである。大喪の礼のとき、幔幕の張った八王子の霊所での儀式を見ながら、空疎と言えるほど簡素な空間の中でただ何度もお辞儀を繰り返している両陛下を見て、ああこの簡素さが象徴天皇制なのだなと初めて思った。その感覚は今に至るまで続いていて、今度の結婚披露宴の絵であらためて確信させられたものである。象徴天皇制の思想の中核には簡素さがあり、それは両陛下の思想でもあるように見える。天皇制をどのように演出しどのように表現するかは、まさに天皇になった人間の人格で決まる。たとえどれほど天皇が木偶人形であり、政治実権上神輿であっても、それは本当は違う。天皇は神輿だという言説こそ実はフィクションだ。

紀宮の結婚披露宴 - 象徴天皇制の伝統を作る両陛下の挑戦_e0079739_1118531.jpg無責任の体系を本質とする日本の政治構造において、実際にはどれほど天皇個人の判断と決断が重要であることか。どれほど大きなフリーハンドと責任が天皇に委ねられていることか。一挙手一投足を決めるのは天皇の意思なのだ。これまで何十年と生きてきたが、天皇制の永続がいいのか、共和制がいいのか、迷いながら結論できない。丸山真男は共和制の日本を夢見ていたように見える。私は象徴天皇制の平和と繁栄の中で育てられてきたから、戦前の天皇制軍国主義の日本を知らない。同じ天皇制なのに本当にずいぶん違う。人間の人生は一回しかない。死んだら死んだ後の日本の歴史を見ることができない。だから私は死ぬまでの間に一度共和制になった日本をこの目で見たいという願望を持っていた。日本人が自分の国家を共和制に変える政治変革のドラマを見てみたいと思っていた。だが、長嶋茂雄が大統領になったり、ビートたけしが大統領になったりするのを見るより、皇室の気高さと誇り高さに感じ入る方がはるかにいいと今は思う。

戦後民主主義の理想は両陛下とともに生きている。天皇陛下とともに憲法を守ってゆきたい。
紀宮の結婚披露宴 - 象徴天皇制の伝統を作る両陛下の挑戦_e0079739_11181523.jpg

by thessalonike2 | 2005-11-16 23:30 | 女系天皇・皇室関連 (7)
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