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大君の 御歌きこえゆ 小豆粥 御法まもらむ 凍える世にも
紀宮の結婚披露宴を寿ぐ
記事
を書いた後で、ある方からご感想を頂戴したので転載して皆様に紹介申し上げたい。最近、堀江貴文のような匹夫の新自由主義者から皇室不要論が喧しいが、皇室を廃止すれば宮中歌会始のような雅な伝統も失われてしまう。丸山真男の精神的貴族主義ではないけれど、身は市場原理主義から疎外された下層階級に落ちぶれても、心は誇り高い日本の貴族の精神を持っていたい。後半で紹介される請願書と宮内庁の逸話も興味深く見逃せない。天皇陛下と皇后陛下の意思(象徴天皇制の一挙手一投足)だろうか。こういう逸話を紹介してもらえた幸運を喜ぶべきだろうか。わが国の君(天皇)と臣(官僚)と民(人民)の三者のよき関係が象徴的に凝縮されたエピソードであるように感じられる。司馬先生なら、何かの短編小説のあとがきで読者に紹介しただろう。紀宮がどういう人かはよく知らない。が、両陛下がこの末娘を心から愛し抜いていたことはよくわかる。
初めまして。いつも、感動しながら無言で拝見している隠れファンです。先日の清子内親王ご結婚のコラム、これほどの内容が盛り込まれた記事は、私の見た限りに於いて有りませんでした。これほどまで書いて戴き、有り難うございます。共感を覚えることばかりです。もう一つ、加筆して戴きたかったのは、紀宮様が今年の歌会始(お題は、歩)でお詠みになった短歌です。
清子内親王殿下お歌
新しき一日(ひとひ)をけふも重ねたまふたゆまずましし長き御歩(みあゆ)み
これは、両陛下の日々を、長年つぶさに見守り、心を配り続けて来たお嬢様の温かなまなざし、それが有ったからこそ出来たお歌でしょう。こういう視点で親を見ている子供が、日本にどれほど居るでしょう。親にも教師にも、敬語など使うことも忘れた日本人が多いと思われる時に、この短歌は、心洗われる思いがしました。また、この思いで繋がって来た親子関係が、里帰りもままならぬ状況になる悲しさ。それは、結婚後も、親子が当たり前に往き来している私達には、想像もできない淋しさがあると思います。
だからこそ、陛下が、紀宮様に「家族の絆は変わらないから折々に遊びにいらっしゃい」と仰ったのでしょう。その深い思いを拝察し、陛下のお言葉が胸に沁みました。気品の高さ、潔い立ち居振る舞い、お嫁に出して皇室を離れるには、本当に勿体ない存在です。何かの記事で、貞明皇后の再来かと思う、と述べた人がいましたが、まさにその感じです。このご結婚を、「関心ナイ」「つまらん」と言って、ビデオショップが繁盛した由。持参金が多すぎるとか、ピント外れややっかみの意見も多く、驚きました。日本の良さが皇室にしか残っていないだけでなく、その良さを感じる人も少なくなっている日本。郵政民営化の投票結果を見ても、自分で的確に判断出来る人が減って来ているんですね。などとぼやき乍ら、私も彷徨う宇宙人なのです。でも、紀宮様のお歌には感動しました。この親子関係を、眩しく感じました。
平成14年の高校生の入選歌(お題は春)が私は好きです。
大阪府 中迫克公
トンネルのむかうにみえる僕の春かすかなれどもいつか我が手に
余談ですが、歌会始入選者の歌は、長年、欠席すると歌会始の儀で、朗詠されませんでした。ハンセン病療養所・長島愛生園の谷川秋夫氏が入選し朗詠されなかった時、私は初めてそれに気付き、両陛下に、欠席者の歌も朗詠されるよう規則を変えて下さいと長い長い「請願書」を書きました。紆余曲折の末、当時の藤森宮内庁長官から、「会議にかけるから安心して下さい」とお電話を戴き、その後、再度、お電話が有り、「今、朗詠されることに決まったので、一番にお知らせします。マスコミや外部には、時期を見てこれから発表します」とのことでした。藤森さんが仰るには、国民からの要望で皇室の規則が変わるのは初めてだそうです。最初に朗詠された欠席者は、青森県新郷村の福士さん。入選歌は、こうです。
青森県 福士重治
青紫蘇の匂へる苗を盲ひわが指にて尺を取りながら植う
福士氏は、戦争で散弾銃を浴び失明した人。今の時代、普通なら天皇は自分の青春も運命も奪った人です。それでも、陛下を慕い詠進歌に応募する老人の、この入選歌を朗詠から外したらバチが当たるでしょう。この人の歌が朗詠され、私は本当に頑張った甲斐が有ったと嬉しく思いました。朗詠されなかった最後の人は、ブラジルのこの人です。
ブラジル国サンパウロ州 村岡虎雄
此の波のはてに祖国の美しと孫に語らひよはひかさねる
今、記憶が定かでは有りませんが、この方は、入選発表の後、亡くなられたのです。私は、入選者が亡くなっても朗詠をお願いします、と請願書に書いたのですが、藤森長官は、それは通らなかったと仰いました。でも、入選したのは歌です。本人が亡くなっても、歌の価値は変わりません。いつの日か亡くなった人の歌も朗詠されるように、と願っています。また、欠席者は、代理人の出席を認め、身動き出来ない欠席者に、皇居での一部始終を話し聞かせ、喜ばせて上げることが出来ればと思います。
今年の宮中歌会始をNHKの7時のニュースで見た後に、何となく心がさわめいて、雰囲気だけで捻った即興の一首を恥ずかしながら表題に上げる。私は勉強はしたことはないけれど、高校の古文の授業で習った万葉集の世界が大好きで、山上憶良や柿本人麻呂が詠む歌の言葉と韻律に恍惚として心を奪われる。梅原猛の『水底の歌』の読書も、話の中身より柿本人麻呂の歌そのものの方が実によかった。彼ら万葉歌人の世界に心を浸らせて憧れとコンプレックスを感じているときが楽しい。何となく、頭韻と足韻のリフレインに奈良時代の独特の感性がイミテートできたかなと思って、それから「凍える世」に意味を掛けられたかなと思って、ひとりで悦に入っていた。「御法」とは言うまでもなく大事な大事な日本国憲法。私にとって天皇陛下は日本国と日本国民の統合の象徴である以上に、まさに日本国憲法の象徴である。私の場合は徹底的に奈良が好きだ。奈良の茶粥はうまい。人麻呂や憶良が生きていたら、今の時代を見てどのような歌を詠むだろう。
by
thessalonike2
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2005-11-28 23:30
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