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本と映画と政治の批評
by thessalonike2


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文藝春秋1月号の誌面から - 日本人の知性劣化と「呪術の園」
文藝春秋1月号の誌面から - 日本人の知性劣化と「呪術の園」_e0079739_1012841.jpg電車の中吊に文藝春秋の1月号の宣伝広告が出ていて、早速、オアゾの丸善本店まで行って頁を捲ってみた。丸善本店は二階に雑誌コーナーがあり、エスカレーターを上がった正面に文藝春秋を積み並べたワゴンが配置されている。買う前の中身の確認のつもりだったのだが、案の定、看板に偽りありで衝動買いを思いとどまった。広告は「司馬遼太郎さんの予言 - 没後十年をむかえて」と目立つ字で書かれてあり、司馬先生の大きな顔写真が右側に配されていた。この記事が今号のメインであり、この記事タイトルで客を寄せているのだが、実際に頁を開くと、何とその記事を書いているのは養老孟司で、養老孟司による司馬遼太郎論だった。たちどころに興味を失って購買中止の意思決定を下したが、立ち読みした実際の中身も粗末で、粗末と言うよりも、あれは文藝春秋の編集部が予め文章のアウトラインを準備して、それに養老孟司に加筆編集させたのではないかと思われる内容だった。養老孟司などに司馬先生を論じる資格などないし、そのような能力などない。



文藝春秋1月号の誌面から - 日本人の知性劣化と「呪術の園」_e0079739_1014163.jpg養老孟司が現在の日本の思想界で司祭のようにふんぞり返っている事実が私には異常に見える。あの男はただの解剖学者で、ただのお医者さんで、これまで先哲の古典思想など読んだこともないし、学問的に考えたこともないはずだ。歴史の知識もない。なぜ養老孟司が日本の思想界の第一人者のように振る舞うことができるのだろう。文藝春秋の新年号には一年の総括と展望が特集される。特集にはそのときの日本の思想界の大御所が登場してそれを司(つかさど)る。そしてその人間が文春知識人の第一人者であり、嘗ては司馬先生や立花隆が分担していた。梅原猛にはデフォルトでその資格がある。養老孟司はやめて欲しい。文藝春秋の新春号で養老孟司に司馬先生を論じさせるのは、司馬先生に対する冒涜だろう。文藝春秋編集部は恥を知るべきだ。四百万部のベストセラーになった「バカの壁」は、それを涎を垂らして読むことがバカの証明のようで、私は敢えて読まなかった。巷の養老孟司現象そのものが日本の知的水準の低下であると思う。

文藝春秋1月号の誌面から - 日本人の知性劣化と「呪術の園」_e0079739_1015441.jpg養老孟司の「バカの壁」を涎を垂らして読むことは、飯島愛と爆笑問題がテレビで政治報道の解説をするのを「分かりやすくて面白い」と言って口を開けて眺めているのと同じなのだ。それがB層なのだ。知性の堕落現象なのであり、日本人がバカになっているのであり、体制(権力と資本)によってバカにさせられているのであり、不愉快なことであり、正常な知性の維持を思う者はそれに対して本能的に抵抗感と拒絶感を覚えるのが当然なのだ。私は総選挙を論じた際に、政権側が仕掛けたB層選挙にも社会科学的な内実があり、その中身は日本人の知性格差の現実ではないかと言った。B層はマーケティングの仮説だが、同時に社会科学的な日本の真相でもある。社会科学の理論は実践によってプルーブされる。そう言ったのはマルクスだ。竹中平蔵のB層理論は実践によって検証された。政権側によるB層仮説を、国民に対する愚弄だと憤慨し非難することも大事だが、実際にB層仮説を適用してマスコミを動員した結果、選挙圧勝の果実を捥ぎ取った事実をも思わなければならない。

文藝春秋1月号の誌面から - 日本人の知性劣化と「呪術の園」_e0079739_1034665.jpg想起するのはウェーバーの「呪術の園」である。日本人は「呪術の園」でアヘンを吸っている。吸わされている。だから、私はブロガー同盟という運動をネットで提唱して推進しようとしているのだけれど、発起においては、それは単なる数集めの政治運動だけではなく、内実として、日本のこれ以上の知性劣化に歯止めをかけたいという文化運動の意味と目的もあった。日本人の大脳皮質を薄くしよう薄くしようと仕掛けてくる米国と政権と資本の側のメディア戦略に対して、それにプロテストして、二十年前、三十年前の日本人の知的水準を回復しようじゃないかという知性主義復興(ルネサンス)の側面もあった。日本人は、最近の中学生や高校生は全然勉強してないのに、韓国人の半分以下の勉強時間しかないのに、「勉強しすぎ」の自己認識を持っている。もっとだらけよう、もっとバカになろうという主張の方に軍配を上げる。知性否定主義の方に一票を入れる。爆笑問題の政治解説など二十年前なら考えられない事態ではないのか。何でそのような現実を簡単に容認し肯定するのか。

文藝春秋1月号の誌面から - 日本人の知性劣化と「呪術の園」_e0079739_1021280.jpg日本人をバカにする運動(Make Japanese Fool Themselves)の主力は米国と政権と資本である。竹中平蔵だ。だがその運動に手を貸したのは左翼方面の脱構築の連中だ。私はそう考えている。日本人は働きすぎだと言うけれど、一面で確かにそれは事実だが、米国人の方が日本人よりはるかに多く働いている。休日もずっと少ないし、一日の労働時間も多い。残業時間は短いが、ホワイトカラーは帰宅してからのワーク・アット・ホームを二時間以上やっている。日本人はそれを知らない。米国人は遊んでいると思っている。嘘だと思うのなら米国の祝祭日や夏休みの日数を調べてみればいい。ゴールデンウィークなんてない。クリスマスから後は(前からも)休むが、正月は2日には出勤して仕事している。日本人は勉強しすぎ、仕事しすぎの自己認識を植え付けたのは左翼と脱構築の連中だと私は思っている。その観念が刷り込まれたまま離れず、日本人は勉強しなさすぎ、働かなさすぎの自己認識に至らない。二十年前の電車の中では、皆、必死にDOS入門とかEXCEL入門のマニュアル本と格闘していた。

今は男も女も携帯電話で遊んでいる。若い女はコンパクトを開いて化粧に夢中だ。養老孟司が売れるはずだ。知識的なものにコンプレックスを感じていた日本人に戻ろう。あの頃の日本人の生き方を取り戻そう。知識的な高さや知性的な完成度に対して反発する感情を正当化するのはやめよう。無知の正当化や合理化はやめよう。知識(や先学の古典)を無条件に貶損する脱構築(ポストモダン)の態度を捨てよう。脱構築の帰結は格差でしかない。
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文藝春秋1月号の誌面から - 日本人の知性劣化と「呪術の園」_e0079739_1012932.jpg

by thessalonike2 | 2005-12-15 23:30 | プロフィール・その他 (15)
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