ライブドア強制捜査の朗報を日本における新自由主義崩壊への一里塚として寿ぎたい。衝撃的なニュースだったが、昨年、郵政民営化法案が参院で廃案になって以来、そのときからずっと心を塞がせる暗鬱なニュースばかりだったので、ひさしぶりにテレビのニュースを見る目が輝いてしまった。今日は朝からマザーズでライブドア株のストップ安が続いている。ライブドア株保有者の焦心は尋常ではないだろう。捜査は続く。これから数日間は地検からライブドアの違法経営の内情が暴露される。少しずつ情報が小出しにされ、そして遠からず堀江貴文の事情聴取が始まる。ニュースでは堀江貴文の刑事責任の追及が公然と言われていて、これはテレビ局報道部が地検からの情報をベースに記事を書いているもので、すなわち最悪の場合は数日中に逮捕、よくても書類送検、在宅起訴は免れないだろう。起訴されれば確実に有罪になる。堤義明と西武グループの運命と同じ。私が注目したいのは、今早朝の堀江貴文の記者会見の模様だ。
記者会見に弁護士が同席していなかった。通常、このような場合には必ず弁護士の同伴がある。自社の商取引の正当性を主張する以上、捜査は不当であるとか、違法行為はしていないとか、社の潔白を証明するとか、そういう言葉を弁護士の口を通じて表明するものである。あるいは、堀江貴文に後で問題となるような余計な発言をさせないように、横で監視する役割を果たさなければならない。と思うが、画面を見たかぎりでは弁護士の姿はなく、堀江貴文が単独で記者の質疑に応じていた。よほど自信があるのか、それとも完全に白旗なのか。弁護士はなぜ記者会見に同席しなかったのだろう。具体的な証券取引法上の容疑やその検討については立ち入らないが、現時点で今回の捜査劇の裏を私なりに解読すると、これは米資本によるライブドア追い落としの陰謀ではないのか。つまり、結論から先に言えば、民営郵貯簡保と民営NHKの分捕り合戦で、ライブドア側が分け前を欲張りすぎて、米資から刺された結果なのではないか。
今度の堀江貴文の衆院選出馬が、民営
郵貯のカネと民営
NHKが目的である点は前に指摘した。小泉首相は分け前(論功行賞)を堀江貴文に約束したはずである。出来高払いの口約束だっただろうが、間違いなく報償をその場で約束したはずだ。堀江貴文が出馬したから自民党は勝利した。堀江貴文は解散総選挙の博打に出た小泉首相にとって絶対に必要なカードであり、逆に岡田民主党に奪われてはならない飛車角の駒だった。小泉首相は堀江貴文を高く買い、岡田克也は堀江貴文を安く見積もった。そして選挙の結果が
分かれた。堀江貴文は自民党圧勝の最大の功労者である。だから彼は小泉政権に何でも要求できたし、選挙前の口約束以上の褒美をせがんだとしても不思議ではない。そしてその分け前を最終的にどう捌くかは竹中平蔵の仕事となった。総務大臣というのは郵政事業と放送事業を所管する。郵政民営化、すなわち郵貯簡保の金の分配は竹中平蔵のフリーハンドとなり、そしてNHK民営化が竹中平蔵の今年の仕事となった。
二つとも米資が虎視眈々と狙っていた大いなる日本資産であり、涎と垂らしながら竹中平蔵と小泉首相の背中を突っついていた極上の獲物である。選挙に勝ち、目標どおり獲物を受け取る番になった。恐らくそこに向こう見ずな堀江貴文が立ちはだかって待ったをかけたのだ。俺の取り分を多く寄こせと米資と竹中平蔵に横槍を入れたのだろう。堀江貴文は若いから米資の怖さを知らない。竹中平蔵の調停と分配案に承服せず、事前の報償の口約束をマスコミに暴露すると脅しに出たのではないか。だから寝首を掻かれたのだ。ライブドアの分け前が消えれば、そのポーションはそっくり米資の懐に入る。これから数日間、取り分の譲歩をめぐって堀江貴文と小泉政権の間で駆け引きが続くだろう。交渉が決裂すれば堀江貴文は逮捕される。堀江貴文が譲歩すれば起訴猶予で済み、外資が下落したライブドア株を買いに入って会社も安堵される。そのせめぎ合いになる。いずれにせよ、昨夏に堀江貴文が選挙に出馬して夢見た大儲けは儚く消えた。
堀江貴文の違法経営は以前から噂があって、内部告発を元に地検特捜部が内偵している動きはかなり明瞭だったらしい。堀江貴文が選挙に出馬するときに、自民党が要請した「ライブドア社長を辞めること」という条件が、当時は私には意味不明だったが、こうなるとその意味がよく分かる。噂が真っ黒で、いつでも司直が動ける状態にあり、その事実を誰もが承知していたから、だから小泉首相は堀江貴文にライブドア社長職を辞めて立候補するように要請したのだ。今日のテレビ報道で亀井静香がインタビューに出て、ライブドアの違法経営は自民党執行部の全員が事前に知っていたはずだと語っていた。だから、今回の捜査着手は竹中平蔵と小泉首相の決断である。私は、選挙後の政局分析で、次に小泉首相によって粛清される生贄は麻生太郎だと
予測した。しかし現実はその想像をはるかに上回る奇怪さと残酷さを見せ、何と選挙で最大の功労者だった堀江貴文が生贄として屠られた。新自由主義の金儲けの残酷さと過激さは人の想像を超える。
今回の事態は新自由主義者内部の欲得の内ゲバの結果である。リーマンブラザーズは、昨日までにライブドア株を全て放出していたのではないか。