昨日の昼から今朝にかけてライブドア関連で新しい疑惑が次々に報道され、事件は単にマネーライフ買収に絡まる証券取引法違反にとどまらず、さらに大きく広がる様相を見せている。昨日昼は地検特捜部による幹部三名の事情聴取の方針が伝えられたが、夕方のニュースでは、問題のライブドアマーケティングによるマネーライフ買収に際して、幹部間で「危険だが、実行しましょう」とメールのやり取りをしていた事実が明らかにされた。テレビの報道では、この地検からの情報は、一昨夜から昨早朝にかけての捜索で押収した証拠品の中から判明したという説明だったが、半日足らずの押収品調べでここまでタイミングよく視聴者受けする情報が出て来るとは思えない。恐らく最初から内部告発でメール情報の詳細を押さえていたか、メールサーバーのファイルの所在を掴んでいて、捜索でそれを物理的に押さえた上でのリークであり、要するに、最初から捜索一日後の発表情報として地検特捜部がマスコミ用に用意していたものだろう。
さらに今朝になって読売新聞がスクープを出し、ライブドア本体も子会社の利益を本社に付け替える不正経理を行って粉飾決算している疑惑を報じた。朝日新聞は、ライブドアマーケティングによる偽計取引が堀江貴文本人の指示によるものと特捜部が見ている内情を紹介。宮内亮治のトカゲの尻尾切りで逃げようと図ったライブドアに対して、堀江貴文の事情聴取必至のカウンターを浴びせた格好になった。昨夕のテレビ朝日のニュース番組で、大谷昭宏は「地検は間違なく堀江社長の身柄を拘束する」と断言。朝日新聞の取材班がその点に関してかなり高い確度の情報を得ている気配を匂わせた。こうなると堀江貴文側は打つ手がなくなり、逃げ伸びる方策がなくなる。一昨日、捜査直後のマスコミの電話取材に出た堀江貴文は、マネーライフ社の企業規模の小ささを強調して、つまりこの程度の偽計取引は市場ではよくある話で、証券取引法違反と言っても大した問題ではなく、訴追されても立場を維持できる旨を仄めかしていた。
今日もこれから地検の(事前に計画された)情報リークがあり、マスコミの関心はさらにライブドアの経営疑惑の核心に迫って行くだろうが、報道でもう一つ注目されるのが、これから発売される週刊誌のスクープ記事で、週刊文春や週刊新潮が何を報じるかに興味が注がれる。通常、予想されるのは堀江貴文に関するスキャンダルか、あるいはライブドア社員による会社の内情告発で、これまで蓄えていた封印ネタが解禁される可能性があるし、あるいは編集部にタレコミで入ってきた中で目を惹く暴露情報が出てくるだろう。こうなると堀江貴文は水の落ちた犬同然の状態になり、社会的立場を一気に失ってマスコミの表に顔を出せなくなり、都内某所に潜伏という状態にならざるを得ない。これまで堀江貴文をアイドルに仕立ててタレント活動させ、ライブドアの株売りに全面協力してきたマスコミが、一点して堀江貴文をバッシングする。特に昨年、買収を仕掛けられて不愉快な思いをさせられたフジテレビが、今回は鬱憤晴らしの如く冷酷で容赦がない。
問題の株だが、本日午前の時点で取引停止となり、東証はライブドアの上場廃止の検討に入ったと伝えられている。取引停止ということは売買不能ということで、売ろうにも売れず、上場廃止となれば事実上の紙切れだろう。無価値の証券である。報道では、昨日一日でライブドアの全発行株式数の25%の株が売り注文に出されたと言われていて、その多くが個人投資家からのものである。現在、ライブドア株を保有する個人株主数は22万人。昨年、フジテレビの買収に動いた時点の数は16万人だったから、一年足らずで6万人も増えている。果たして彼らの手元に残った株券は幾らの現金を彼らに与えるのか。自業自得と言えばそれまでだが、場合によっては株主代表訴訟の事態に発展してもおかしくない。これまで、堀江貴文は自分は市場のルールを守って経営をしていると繰り返していた。起訴有罪となればそれが真っ赤な嘘だったということになり、不正行為で会社に損害を与えた経営者として株主から損害賠償責任を問われる立場になる。
証券取引法違反は懲役5年以下の罰金500万円以下だが、株主代表訴訟が起きて経営者の損害賠償責任が問われた場合、堀江貴文や宮内亮治が私財供出で負う賠償額ははるかに巨額のものになる。堀江貴文を神と崇めて株券を購入した信者(株主)たちはどう動くのだろう。が、実際のところを考えれば、ライブドアの経営は堀江貴文という人格と不可分一体のものだから、堀江貴文以外の人物が登場して会社経営を再建する図というのは想定しにくいところがある。株価のつり上げとM&Aこそが真の本業であるライブドアは、そのマネー操業が止まると途端に表の本業を維持できなくなるという評論家の分析もある。現経営陣が刑事責任を追及される局面になれば、恐らくライブドアは企業グループとしての体制を維持できなくなり、ここ数年間にライブドアに買収されて傘下に入った各企業が、またそれぞれ別の企業に買収されてバラバラになるのではないだろうか。個人株主は新自由主義の看板である「自己責任」(=泣き寝入り)の結末になりそうだ。
考えてみれば、個人株主も堀江貴文の株屋としての錬金術のカリスマに惹かれて株券を買ったのであって、決してIT企業としての技術力や製品力に期待してライブドア株を買ったわけではない。