党首討論は午後3時に始まって45分間の持ち時間があったが、ライブドア問題について前原誠司が質問を始めたのは3時35分からで、わずか10分間の質疑応答であり、民主党側からは何の新しい証拠提示や疑惑を確証づける情報の提出はなかった。「お楽しみに」と嘯いて期待を持たせておきながら、実際の内容はまさに拍子抜けの茶番劇であり、国民を愚弄して余りある前原誠司と民主党の態度だったと言える。党首討論を通じて堀江メール問題は一歩も前に進まない平行線で終わり、メールの真偽も、カネの出入りの実否も、事実解明に寄与する材料は何も出て来なかった。追い詰められた民主党が起死回生の一手を打って来るだろうと思って見守っていた国民の期待は裏切られ、民主党に対する国民一般の不信感と失望感はほとんど決定的なものになってしまった。堀江メール問題については、結局のところ、2/16の初日に小泉首相が言った「ガセネタ」で事実上の決着が着き、疑惑追及の展開はこれ以上なく、民主党内の責任問題になっていくだろう。
それ以外に考えられない。前原誠司は党代表を辞任すべきである。永田寿康は議員を辞職すべきだ。国民と国会に対して謝罪して責任をとれ。永田寿康の行為は、国権の最高機関である国会を侮蔑し、神聖な権威を冒涜する最悪の愚挙である。懲罰動議の前に民主党自らが永田寿康を除名して議員辞職させなければならない。そうでなければ野党第一党としての国民からの支持と信頼を回復できないだろう。2/17予算委質問で小泉首相の前で立ち往生して泣きを入れた永田寿康を見て唖然としたが、この小僧はあまりに国会と国民を
バカにしている。神聖な国会を「テレビタックル」のスタジオと同じだと勘違いして振る舞い、国会議員をテレビに出演して視聴者を笑わす政治タレントだと錯覚している。国会を芸能界の一部だと思っている。そういう勘違いをしている人間は一刻も早く議事堂から追放し、たけし軍団か吉本新喜劇に就職してもらえばよいのだ。民主党の三十代から四十代前半の若手議員には、この類の政治芸能人化した軽薄な小僧が多すぎる。
今回、民主党が自民党に要求している国政調査権の発動が認められれば、偽造された資料や情報を根拠に、一般民間人の預金口座が国家権力の手で調べられて暴かれてよいということになる。例えば、村上世彰が菅直人の愛人である広告会社の女の口座に(秘密の政治献金の目的で)三千万円振り込めと部下に指示したというメールを誰かが捏造して、自民党の国会議員がそのメールを根拠に国政調査権を発動して女の銀行口座を調べろと言ったら、民主党は尤もだと言って応じるのか。例えば、木村剛が鳩山由紀夫の愛人の銀座のホステスの口座に三千万円振り込めと指示したというメールのコピーが、怪しげなフリージャーナリストを経由して出てきたとき、国政調査権の発動でホステスの口座を調べろという自民党の要求に、民主党は唯々諾々と応じるのか。そんな要求に応じるわけがないだろう。あり得ない。ガセはガセだ。堀江貴文から武部勤に数千万円の賄賂が渡った疑獄事件も重要だが、それ以上に永田寿康が行なった偽造メール事件は重大だ。
単なる失策で見逃すことはできない。メールが偽物であることは、フリージャーナリストが何誌かの編集部に持ち込んで、そこで真偽を疑われて掲載を拒否された時点で明らかだった。週刊誌でさえガセだと怪しんだメールを、国会質問の証拠材料として使えるはずがない。平沢勝栄の言うとおり、メールは実体としては単なる怪文書に過ぎない。週刊誌であれば、それは根拠のない中傷だとして名誉毀損で訴えられて損害賠償請求される。国会議員には不逮捕特権と免責特権があり、院内での発言は罪を問われない。だからこそ議員の国会での発言というものは責任が重いのだし、重くなければならないのだ。民主党の国会議員は、前原誠司と執行部の姿勢を支持して銀行口座の話に矛先を向けるのではなく、事を曖昧に済ませるのではなく、何故このような偽メールが国会質問の道具としてオーソライズされたのか、自らの手で真相解明して、国民の前に明らかにして贖罪すべきだ。無責任なフリージャーナリストの顔を民主党の手で世間に曝す必要がある。
普通に国会審議を続けていれば、三点セットなり四点セットで、民主党には順風満帆の国会論戦だった。堀江貴文の逮捕以来、小泉内閣の支持率は順調に低下してくれていたのである。我々は、馬渕澄夫が耐震偽装問題から安晋会の疑惑に切り込むタイミングを待望していたのであり、ポスト小泉を叩き潰して再び政局の激動を迎えるのを待っていた。前原誠司が今度の偽メール事件を惹き起こしたのには何か裏があるのではないか。国会は、この大事な時期に騒動で膠着して一週間の時間を潰した。そして与党の立場を再び優位にして、予算案の審議採決の日程を与党のペースに引き戻してしまった。安晋会疑惑で鳴りをひそめていた安倍晋三が、着実に「復権」を果たして表に出始めている。深読みだが、安倍晋三と前原誠司が示し合わせて偽メール事件を仕掛けたのではないか。ライブドア事件から攻めても投資事業組合問題から
安晋会に疑惑が及んだ。耐震強度偽装事件から攻めても、当然ながら
安晋会疑惑に流れ込んだ。今国会は安晋会疑惑追及国会になってしかるべきだった。
安倍晋三と前原誠司は仲がいい。この深読みが仮に正鵠を射ているとすると、偽メール事件の第二幕は民主党内の権力闘争と党分裂、改憲へ向けての政界再編という展開になるのだが。