新聞各紙によれば、自民党国対委員長の細田博之は懲罰委員会での永田寿康へ懲罰審査について、民主党の検証チームの調査結果が出るのを待って結論を出す意向を示している。これはなかなか巧妙な国対戦術だ。早期決着を図ろうとした民主党に対して、フリー記者(仲介者)の国会招致を要求してはねつけている。やり方が巧い。
偽メール事件を人質に取ってこれから先の国会運営を完全に与党のペースで固める戦略だ。民主党は手も足も出ない。フリー記者を証人喚問でもされたら前原体制が崩壊する。招致はいつでも要求できるし、国民は与党による西澤孝の招致を圧倒的に支持する。民主党にそれを拒絶できる理由も余力もない。細野豪志の公約では検証チームの報告は3/3の二週間後の3/17に出される。と言うことは、3/17までは国会は完全に与党が仕切り、民主党議員は人形になる。民主党の中は検証作業に関心が集中して国会審議どころではないだろう。検証作業そのものが、ある種の権力闘争の舞台になる。次を狙っている玄葉光一郎は出鱈目な報告を国民の前に出すわけにはいかない。
細田博之の作戦は実のところ理に適ったもので、検証結果の何如によっては永田寿康の辞職の事態も十分にあり得る。お手盛り調査報告に終われば国民が納得しない。もう一回検証をやり直せという話になるし、本当に西澤孝を招致して証人喚問せよという声になるだろう。これから一週間の間に何か特別に大きな事件や騒動が起きないかぎり、民主党に逃げ場はなく、結果報告のデューがプレッシャーになって党内の政治力学を動揺させてゆく。渡部恒三の登板で一旦は表面を取り繕ったが、この程度の応急措置は検証作業の中ですぐに破綻してもおかしくない。民主党の国会議員は開店休業だが、検証チームの構成員はここが最大の勝負どころである。で、引き続きブログの事件推理に注目をいただきたい。まず、永田寿康および党の国対から仲介者にカネが渡ったかどうかの問題だが、平沢勝栄はカネが流れたはずだと主張しているが、私はカネは渡っていないと見ている。正確に言えば未だ渡っていないのであり、本当は渡すはずだったのだが、偽メール事件が紛糾してそれどころではなくなったのだ。
西澤孝は言わば時代劇の捕物帖に出てくる下っ引きであり、デュモンマーケティングは民主党の国対事業の下請企業だった。民主党国対の手足となって末端捜査を担当する情報機関だったのである。下請だから当然ながらカネのやり取りはある。だが今回は国対事業戦略(武部勤撃墜作戦)が事前に失敗したためにカネを支払う暇もなかった。というのが本当のところで、永田寿康の会見の席での堂々たる金銭授受否定発言の真相に違いない。西澤孝からLD関係者の情報源にはカネが渡ったはずだが(平沢証言)、永田寿康と民主国対がそれを経理補填するまでには至らなかった。さて、ここからが推理の重要なところだが、情報源(LD関係者)に対して億単位の巨額を出して偽メール現物を買収したのは、永田寿康ではなく平沢勝栄と自民党である。官邸の金庫から官房機密費の現金の束を運んだのだろう。買収したのは偽メールのコピーだけではなく、LD関係者そのものをそっくり買収して身柄を手に入れたのである。その「買収契約」の日時は2/16の夜。これがまさにあの2/16の小泉首相のガセネタ発言の裏なのだ。
情報源を突き止め、情報源の身柄を民主党から奪い取るべく周到に手を打った上で、エースのカードを切った(ガセネタ発言)のである。小泉首相は喧嘩(タイマン)に滅法強い。ここでもまた博徒の勝負強さが如何なく発揮された。野田佳彦が証言していたが、途中から仲介者が情報源と全く連絡が取れなくなったと言っていた。これは情報源が民主党を裏切って平沢勝栄に身柄を預けたからである。2/16の午後、小泉首相と武部勤は官邸の一室に三時間籠もって、永田寿康が暴露した「堀江メール」の検証と対策を協議している。協議後に記者団の前に出てきた武部勤の表情は顔面蒼白だった。後にみのもんたをして「武部さんの人のよさが出てるよね」と言わしめた映像事実である。堀江貴文と武部二男の黒い関係は恐らくあったのだ。武部勤はそれを承知していたのであり、幹事長辞任の申し出も含めて、その場で全てを小泉首相に打ち明けたに違いない。で、官邸と自民党の情報網をフルに稼動したところ、西澤孝がメールを週刊誌に持ち込んだ事実が出て、そこから情報源(LD関係者)を割り出したのだろう。
私は2/16の夜には買収交渉が成立したと見ている。三時間の協議の後、小泉首相の判断で「ガセネタ」反撃作戦が意思決定され、即座に記者団の前でガセネタ発言がかまされる。その夜のうちに平沢勝栄の密使が情報源とコンタクトして現金と交換に身柄を押さえたのだろう。だから、2/16の夜に仲介者経由で永田寿康の手元に届く予定だった「二の矢」が届かず、未然に封じられた。丸腰にされた永田寿康は2/17の予算委で何も言えず、小泉首相の前で泣き言を言って立ち往生するほかなかった。全面降伏。永田寿康は驚いたに違いない。小菅の堀江貴文からのメール否定発言は想定の範囲内だったとしても、小泉首相のガセネタ発言と、さらに地検特捜部のメール不在発言の二つは衝撃だっただろう。この二つは全くの想定外で、二の矢も届かず、2/16の夜のうちに永田寿康は完全に武装解除された。国民の前で赤恥を曝して敗残するのみとなった。勝負はあっと言う間に決着した。まさかガセネタ発言が飛び出て来るとは思わなかったのだ。自民党中枢は混乱に陥って、小泉首相も前後不覚で狼狽すると確信していたのだ。
平沢勝栄は民主党からカネが動いたと言っているが、平沢勝栄も人が悪い。カネを動かしたのは自民党の方であろう。カネを動かして勝負に勝った。一瞬の勝負で不意に襲ってきた敵を撃滅した。仮に仲介者が国会で証人喚問されても、情報源(LD関係者)がなぜ途中で裏切ったかは証拠がないから分からない。小泉首相は単に運がいいのではない。喧嘩に強いのだ。ガセネタ発言はあの時点では半分はハッタリである。裏目に出て負けに転ぶ可能性もあった。大見得を切って勝負に出たのだ。エースのカードを叩き切って一瞬の居合の勝負に出たのだ。情報源(LD関係者)が自民党の買収工作に乗らず、民主党(西澤孝)の側にとどまる決断をしていれば、小泉首相の博打は敗れていた。メールが平沢勝栄の手に渡ることはなかった。二の矢が飛び、武部勤の首が離れていた。結果がこうして出た以上、武部二男はシロである。嫌疑をかけられる証拠は何もない。ただ、われわれ国民が覚えておいてよいことは、この騒動のあいだ武部二男は一度も表に顔を出さず、最初は訴訟を起こすとさえ言ってなかったことである。
道産子の武部勤は人がいいと私も思う。冷徹非情に斬る小泉首相とは好対照だ。