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本と映画と政治の批評
by thessalonike2


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日本代表をWBC優勝に導いたイチローのカリスマとリーダーシップ
日本代表をWBC優勝に導いたイチローのカリスマとリーダーシップ_e0079739_12411369.jpgWBCは大会MVPを松坂大輔に与えたが、大沢啓二も言っていたとおり、真のMVPはイチローであり、イチローにこそMVPを受賞させるべきだった。WBC運営事務局サイドのある種の悪質な政治的意図を感じる。イチローが日本チームを一つに纏め、イチローが日本チームを牽引し、その日本チームが優勝を果たした。イチローが偉大なのは、有言実行で、実際に最も勝利に貢献する活躍を自ら示していたことだ。私は準決勝と決勝の二試合しか見ていないが、イチローの打撃と走塁は他の諸選手とは全く別格の水準で、日本チームの得点力の源泉はイチローにあり、イチローが点を取って投手が押さえて日本は勝っていた。数字だけ見ると日本チームの打撃成績は悪くはないが、私が見た限りでは、イチロー以外の選手でまずまずの調子だった打者は多村仁だけで、他の打者は昨年の公式戦当時の姿が別人のように不振に喘いでいた。松中信彦も小笠原道大も外角球から目が離れてサードフライにしていた。今江敏晃や青木宣親の打撃は二軍選手並みのレベルで、とてもWBCに出場する選手の能力ではなかった。



日本代表をWBC優勝に導いたイチローのカリスマとリーダーシップ_e0079739_123181.jpgイチローだけがシーズン中と同じ実力を見せていた。久しぶりにイチローのバッティングを見たが、外角球をサード頭上のライナーに弾き返す打撃や、内角低めを右腕のバットコントロールで一、二塁間をゴロで抜く打球にする技術を堪能させてもらって満足だった。準決勝の韓国戦では、二遊間にゴロを転がして、俊足で駆け抜けてヒットにするイチロー独特の内野安打も見ることができた。これらのパフォーマンスを乾坤一擲の大舞台で見事に発揮し、準決勝三安打、決勝二安打の結果を出したイチローは本当に立派だ。走塁も素晴らしかった。五回の追加点は多村仁の三塁内野安打の間にイチローが本塁生還して得たものだが、このプレーは、本来はキューバ三塁手エンリケスの超美技で、本塁に投げても一塁に投げてもアウトだったが、イチローは迷わず本塁に突入、イチローの気迫と俊足に逡巡したエンリケスがバックホームを躊躇して断念、その微妙なコンマ数秒が影響して一塁もセーフにしてしまった。まさにイチローの足で稼いだ一点だったが、九回に見せたイチローの走塁も凄かった。理想的な走塁だった。

日本代表をWBC優勝に導いたイチローのカリスマとリーダーシップ_e0079739_12311869.jpg足が速いだけでなく走塁のスタートが早い。ベースランニングが巧い。巧いだけでなく果敢にリスクを取って行く。感動的なランニングとスライディングを見せる。決断力と高度な技術がある。あの場面は福留孝介がレフト前にヒットを打って、通常の二塁走者では絶対に本塁生還は無理な場面なのだが、イチローは最初からクロスプレー前提で全力疾走し、猛然と三塁を回っていて、テレビの画面では三塁走者の西岡剛のすぐ後ろをイチローが猛スピードで追いかけていた。足が速い。韓国を挑発したイチローのビッグマウスは、賛否両論あるだろうが、あの言葉で日本チームの心を結束させたのは事実であり、これまでの野球の日本代表チームには無かった出来事だった。イチローが吐き出す一言一句が影響して日本チームの結束力を高め、精神的なボルテージを高め、強い闘争心を引き出したのは間違いない。チームのために死力を尽くして戦う。自分がやらないと負ける。日本と日本国民が恥をかき失望する。それは恐らく、上原浩治が野球人生の中で忘れていたことで、そして準決勝の韓国戦での力投を導き出したものだった。

日本代表をWBC優勝に導いたイチローのカリスマとリーダーシップ_e0079739_12312755.jpgキューバの監督が「自分たちは金のためではなく誇りのために野球をやっている、国の名誉のために戦っているのだ」と言っていたが、同じ感慨と感動を上原浩治や日本の選手たちも等しく思っただろう。日本のプロ野球選手も金のため自分のための野球になっていた。金のため自分のための野球をやっていて、負けても「楽しめたからよかった」などとエクスキューズを言い得ていたから、だからアテネで格下の豪州チームなどに負けたのだ。今回のイチローの挑発はその退路を断ち、必勝以外にない断崖絶壁の立場にチームの全員を置き、「楽しんでやれた」と言う人間を消した。負ければ帰国できないほどのリスクをチーム全員に負わせたのであり、その最高責任を自分が負ったのだ。短期決戦の軍団を統率するリーダーはこれでいい。トーナメントを勝ち上がらなければいけないチームはこれでいい。必勝のためには軍団の全員が心を一つにし、軍団を引っ張るリーダーに従わなければならない。イチローはその軍団を見事に作った。それは実戦の中で自ら技能のカリスマ証明をすることでもあり、二重の意味での賭けだった。

日本代表をWBC優勝に導いたイチローのカリスマとリーダーシップ_e0079739_12313735.jpg城島健司と松井秀喜がWBCに参加しなかったことは、ひょっとしたら日本チームにとってよかったかも知れない。二人が参加していれば、イチローのヘゲモニーは実現しなかった可能性がある。リーダーシップの機能が分散していただろう。今回の日本代表はまさにイチロージャパンであり、イチローが中田英寿の役割を果たしていた。結果を出したイチローはリーダーとして立派だ。日本テレビの実況アナウンサーが何度も言っていたが、WBC第1回大会優勝国の栄誉は歴史上永久に輝く。未来の日本国民に不滅の財産を残したことになる。その功績を作ったのはイチローだ。次のWBC日本の監督は誰だろう。私の予想ではバレンタインが率いそうな気がする。三年後だと、古田敦也にはまだ少し早い。バレンタインが監督なら米国の専横を抑えることもできるだろう。WBCという野球を楽しめる新しい機会を得たことはよかった。サッカーのように国を背負って戦う野球を見るのも楽しい。昨年から日本シリーズの後にアジアシリーズが始まったが、WBCを記念して、キューバとメキシコのナショナルチームを毎年11月に日本に招請するようにしたらどうだろう。

ナショナルチームのナショナルゲームの野球が見たい。祝、日本優勝。
日本代表をWBC優勝に導いたイチローのカリスマとリーダーシップ_e0079739_12314721.jpg

by thessalonike2 | 2006-03-22 23:30 | プロ野球・WBC関連 (7)
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